クレアチンは飲むべき?学会の見解(2017年)と、その後の腎臓の研究
サプリの棚で、プロテインの次によく見るクレアチン。名前は聞くけれど、実際どういうものなのか、安全なのかは、意外と知られていません。
2017年の国際スポーツ栄養学会は、クレアチンは健康な人で、副作用が少なく、多くの人が問題なく続けられるとしました。その後の腎臓についてのレビュー(2025〜2026年)では、血液検査のクレアチニンの数値が上がることが報告されています。ただし、クレアチニンが上がっても、それだけで腎機能の悪化を意味するとは限らないとする報告もあります。また、1年を超える長期のデータは、まだ足りません。
「飲む必要があるか」は、研究の結論ではなく、私(運営者)の整理です。必須とは言えません。持病(特に腎臓)や服薬がある人は、始める前に医師に相談してください。
この記事は、2つの部分に分けて書いています。「2017年の学会の見解」と、「その後に出た研究」を、混ぜずに読んでください。
で、実際のところどうなの?
① 2017年の学会(ISSN)は、こう言いました
- クレアチンを補うと、筋肉の中のクレアチンの量が増え、短い時間に強い力を出す運動のパフォーマンスが良くなり、トレーニングの成果が大きくなるとされています[1]。
- 安全性については、健康な人を対象にした研究を中心に、副作用が少なく、多くの人が問題なく続けられた(忍容性が高い)とされています[1]。「忍容性が高い」は、副作用がまったくないという意味ではありません。引用されている研究の1つ(パーキンソン病の患者さんが対象)では、胃腸の不調が、主な副作用として挙げられています[8]。
「1日30g、5年間」について(誤解しやすい点)
学会の見解には、「1日30gまで、5年間まで、悪影響を示す強い証拠はない」という一文があります。ただし、これは複数の研究をまとめた一文です。元になった報告のうち、私が確認できたものは、病気のある人(神経の病気など)を対象にしたものでした。健康な人が、1日30gを5年間続けた研究が、1つあるわけではありません。 この数字を、一般の人が目安にするものとして受け取らないでください。
健康な運動選手の長期の研究としては、アメリカンフットボール選手98人を21か月みた研究が引用されています(平均で1日約5g)。この研究では、調べた血液・尿の項目に、クレアチンを使った人と使わなかった人で、はっきりした差は見られませんでした[9]。
② その後の研究(2025〜2026年)は、腎臓について何と言っているか
腎臓への影響は、特に気にされる点です。2025〜2026年に出た、複数の研究をまとめたレビュー(システマティックレビュー/メタ分析)の要旨を確認しました。
- 血液検査のクレアチニンの数値は、クレアチンを使うと、少し上がることが、3つのレビューで報告されています[2][3][4]。ただし、腎臓の働きを示すほかの指標(GFRなど)の結果は、レビューによって違います。次の項目で分けて書きます。
- 一方、尿素や、腎臓のろ過の力(GFR)では、はっきりした差が見られなかったレビューがあります[2][3]。
- ある2026年のレビューでは、クレアチニンをもとに計算した腎機能の数値は、下がって見えました。しかし、別の測り方(Cr-EDTA)では差がなく、著者は、腎臓の障害ではなく、クレアチニンの代謝が変わったことを反映している可能性が高いとしています[4]。
- 別のレビューでは、使った期間(1か月未満と、それ以上)で分けても、結果に違いは見られませんでした。ただし、1年を超える長期のランダム化比較試験が、さらに必要としています[3]。
血液検査の「クレアチニン」って、何?
クレアチニンは、筋肉の中のクレアチンが分解されてできる物質です。腎臓の働きを調べる血液検査で、よく使われます。クレアチンを飲むと、このクレアチニンの値が、上がって見えることがあります。ただし、「数値が上がった=腎臓が悪くなった」とは限りません。ほかの測り方では、差が見られなかった研究があります。数値の上がりと、腎臓の機能そのものの悪化は、別のものとして考える必要があります。
じゃあ、今日からどうする?
ここから先は、研究の結論ではなく、研究を読んだうえでの私(運営者)の整理です。
- 「安全」とされているのは、主に健康な人を対象にした研究についてです。持病(特に腎臓など)がある方は、自己判断で始めないでください。
- 健康診断などで、クレアチニンの値が高く出ることがあります。飲んでいる場合は、医師に伝えておくと安心です。
- 商品によって、成分や品質、表示は違います。この記事では、特定の商品は推奨しません。
- 必須かどうかについて:食事とトレーニングが整っていない状態でのクレアチンは、優先順位としては後でよい、と考えられます(これは私の整理で、学会や研究の記述ではありません)。
持病(特に腎臓の病気)や服薬がある方、妊娠中・授乳中の方は、医師に相談してください。使用する商品の注意書きも確認してください。
根拠が気になる人へ:研究の中身
① 2017年の学会(ISSN)の見解
- 要旨:クレアチンの補給は、筋肉内のクレアチン濃度を高め、高強度の運動のパフォーマンス向上につながり、トレーニングの適応を大きくしうるとされています。短期・長期の補給は、健康な人や、乳児から高齢者までのいくつかの患者集団で、安全で忍容性が良好だったとしています[1]。
- 本文:「1日30gまで、5年間まで」の一文は、複数の文献をまとめたものです。引用元に含まれる文献として、次のものを確認しました。
- 神経の病気(パーキンソン病、ハンチントン病、ALSなど)に対するクレアチンの試験を、まとめたレビュー。期間は最長5年。ハンチントン病の発症前の遺伝子変異のある人で、高用量(1日30gまで)が使われた[6]。
- 遺伝性の目の病気(gyrate atrophy of the choroid and retina)の患者13人の、5年間の追跡[7]。
- パーキンソン病の高齢の患者60人で、1日4gを2年間。血清クレアチニンは上がったが、シスタチンCなど他の指標は正常で、腎機能は変わらないと報告。主な副作用は胃腸の不調[8]。
- 健康な運動選手:アメリカンフットボール選手98人、21か月。クレアチンの群は、最初の5日間は1日15.75g、その後は平均1日5g(5〜10g)。54項目の血液・尿の指標に、有意な差なし。ただし、飲む人にも何を飲んでいるか分かる状態(オープンラベル)の研究で、使った期間ごとに群を分けて比べています[9]。
② その後の腎臓のレビュー(2025〜2026年)
- 2025年(Naeiniら、BMC Nephrology):血清クレアチニンで12件(クレアチン群177人、対照263人)をまとめた分析。血清クレアチニンは、小さいが有意に上昇。GFRには、有意な差なし。著者は、「一時的で小さい上昇で、腎臓の障害ではなく、代謝の回転による可能性が高い」としています[2]。
- 2026年(Tsiarasら、Journal of Renal Nutrition):ランダム化比較試験19件と交差試験1件をまとめた分析。血清クレアチニンは0.13mg/dL上昇(95%信頼区間 0.07〜0.18)。尿素には差なし。推定GFR(eGFR)は −5.20 mL/min/1.73m²(−15.00〜4.60)で、有意な差なし(信頼区間が広く、はっきりしたことは言えません)。著者は、1年を超える長期のランダム化比較試験が必要としています[3]。
- 2026年(de Souza Almeidaら、International Urology and Nephrology):ランダム化比較試験26件(1,036人)。健康な人と、慢性腎臓病の患者の両方を含みます。血清クレアチニンは0.14mg/dL上昇(0.05〜0.22)。クレアチニンをもとにした推定GFRは −10.75 mL/min(−17.48〜−4.02)で有意に低下。しかし、Cr-EDTAで測ったGFRは差なし(+5.89 mL/min、−0.30〜12.08)。著者は、「腎臓の障害ではなく、クレアチニンの代謝の変化を反映している可能性が高い」としています[4]。
- 副作用全般(2026年、Gonzalezら、Sports):684件のランダム化比較試験(12,800人以上)の、副作用の報告をまとめた構造化レビュー。副作用の報告は少なく、軽いものが中心。量や期間に応じて増える一貫した傾向は見られませんでした。ただし、研究ごとの副作用の報告にもとづく分析で、「報告されなかった」ことが「なかった」ことを意味するとは限りません[5]。
ちょっと注意(この記事の限界)
- 確認の深さ:2017年のISSN見解は、要旨と、「1日30g・5年間」に関わる本文の箇所と、その引用元の一部(4件)の要旨を確認しました。2025〜2026年のレビュー4件は、要旨を確認しました。どれも、論文の本文の隅々までは読んでいません。
- 「1日30g・5年間」の一文が引用している文献のうち、確認できなかったものがあります。この数字は、元の資料で確認できた範囲を超えて、一般化していません。
- 2025年のレビュー(Naeiniら)は、血清クレアチニンの差の具体的な数値を、載せていません。要旨には単位が書かれていますが、論文の本文・表・図・補足資料(報告項目のチェックリスト)では、その単位を確認できなかったためです。単位を推測では補っていません。この記事では、「小さいが有意な上昇」という方向だけを使っています。
- 腎臓のレビューは、健康な人と、腎臓の病気のある人が混ざっているものがあります。この記事は、病気のある人への助言ではありません。
- 腎臓のレビューの著者は、1年を超える長期のデータが、まだ不足していると述べています。長期の影響は、この記事では結論できません。
- 数字は、要旨や、確認した本文の記述にあったものだけを使っています。
参考文献
- Kreider RB, et al. International Society of Sports Nutrition position stand: safety and efficacy of creatine supplementation in exercise, sport, and medicine. J Int Soc Sports Nutr. 2017. DOI: 10.1186/s12970-017-0173-z. PubMed
- Naeini EK, et al. Effect of creatine supplementation on kidney function: a systematic review and meta-analysis. BMC Nephrol. 2025. DOI: 10.1186/s12882-025-04558-6. PubMed
- Tsiaras A, et al. The Effect of Creatine Supplementation on Kidney Function: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. J Ren Nutr. 2026. DOI: 10.1053/j.jrn.2026.04.010. PubMed
- de Souza Almeida A, et al. Impact of creatine supplementation on kidney health: a systematic review and meta-analysis. Int Urol Nephrol. 2026. DOI: 10.1007/s11255-026-05287-x. PubMed
- Gonzalez DE, et al. Creatine Supplementation Dose and Duration Are Not Associated with Increased Side Effects: A Structured Review and Study-Level Dose-Response Analysis of Randomized Controlled Trials. Sports (Basel). 2026. DOI: 10.3390/sports14040137. PubMed
- Bender A, Klopstock T. Creatine for neuroprotection in neurodegenerative disease: end of story? Amino Acids. 2016. DOI: 10.1007/s00726-015-2165-0. PubMed(ISSN見解が引用している文献)
- Vannas-Sulonen K, et al. Gyrate atrophy of the choroid and retina. A five-year follow-up of creatine supplementation. Ophthalmology. 1985. DOI: 10.1016/s0161-6420(85)34098-8. PubMed(ISSN見解が引用している文献)
- Bender A, et al. Long-term creatine supplementation is safe in aged patients with Parkinson disease. Nutr Res. 2008. DOI: 10.1016/j.nutres.2008.01.001. PubMed(ISSN見解が引用している文献)
- Kreider RB, et al. Long-term creatine supplementation does not significantly affect clinical markers of health in athletes. Mol Cell Biochem. 2003. PubMed(ISSN見解が引用している文献)