ジムの疑問ノート

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ダイエット中に、筋肉を落とさないためには?

公開日 2026-10-09/最終更新 2026-10-09/執筆・編集 ちくお(ジムに戻った会社員)

ダイエットで体重は落ちた。でも、鏡を見ると、なんだか筋肉まで減った気がする……。せっかくの筋トレがもったいない、と感じる瞬間です。

先に結論

食事を減らして(エネルギー不足の状態で)筋トレをすると、不足がない場合に比べて、筋トレによる筋肉量(除脂肪量)の「増え方」が小さくなる、という分析があります。一方、筋力の増え方は、同じくらいでした。ここで調べられているのは、筋肉の「増え方」で、筋肉が実際にどれだけ減るかを、直接示したものではありません。

体重を落とすと、脂肪だけでなく、筋肉も減ってしまうことがあります。「せっかく筋トレしているのに、もったいない」と思いますよね。

で、実際のところどうなの?

  • 筋肉の「増え方」:食事を減らして(エネルギー不足の状態で)筋トレをした人は、そうでない人より、筋肉の量(除脂肪量)の増加が小さくなりました。一方、筋力の増加は同じくらいでした。
  • 約500kcalという数字:研究全体の傾向から計算するメタ回帰では、1日あたり約500kcalのエネルギー不足で、筋トレによる除脂肪量の「増加」がなくなると、推定されました。これは、研究全体から出した推定値です。「500kcalを超えた瞬間に筋肉が落ちる」という線や、「500kcal以下なら筋肉が守られる」という安全な線を、実験で確かめたものではありません。
  • 「増えにくい」と「減る」は別のこと:この分析が直接調べたのは、エネルギー不足がある場合とない場合で、筋トレによる筋肉の増え方がどう違うかです。「不足があると、筋肉が実際に減る」と言えるわけではありません。
  • 週10セット:トレーニング経験のある選手を対象にした総説では、1つの部位あたり週10セット以上の研究で、筋肉の減りが少ない傾向がありました。ただし、週のセット数が分かった研究は、15件のうち4件だけで、著者らも、「量が多いほうが筋肉を守る」と言える証拠は不十分としています。「減量中は、1部位10セット以上が必要」という意味ではありません。
  • たんぱく質:国際スポーツ栄養学会(2017年の見解)は、エネルギーを制限する期間に、筋トレの経験がある人が除脂肪量をできるだけ維持するには、「2.3〜3.1 g/kg/日」という高めの摂取量が、必要になる可能性があるとしています。これは、減量中の、筋トレ経験者についての、高めの目安です。初心者が、必ずこの量を目指す、という意味ではありません。
  • 分母に注意:見解の文面は「g/kg/日」とだけ書き、体重あたりか除脂肪量あたりかを、はっきり書いていません(同じ見解の冒頭で、「g/kg/日」は体重あたりと定義されています)。一方、同じ数字を示している、減量中の競技者向けの総説(Helmsら、2014年)では、「除脂肪量1kgあたり2.3〜3.1g」と書かれています。分母が違うと、実際のグラム数が大きく変わるので、この数字を、自分の体重にそのまま掛けて、目標にしないでください。

じゃあ、今日からどうする?

ここから先は、研究の結論ではなく、研究を読んだうえでの私(運営者)の整理です。

  • 「筋肉を増やしたい」と「減量中に筋肉をできるだけ保ちたい」は、別の目的です。研究が示しているのは、エネルギー不足があると、筋トレで筋肉が増えにくくなることです。
  • 減量のペースを、急ぎすぎないほうが、筋肉の面では、有利かもしれません(私の整理です)。ただし、「何kcal以下なら安全」という線は、この研究からは決められません。
  • たんぱく質の数字は、学会の見解(減量中の筋トレ経験者についての、高めの目安)であり、個別の食事の指導ではありません。分母が文献によって違うため、自分の必要量を決めるときは、医師や管理栄養士に相談するのが安心です。
注意

極端な食事制限や、体重への強いこだわりがある場合、持病がある場合は、医師や管理栄養士などの専門家に相談してください。

根拠が気になる人へ:研究の中身
  • 2022年のまとめ(Murphy & Koehler):エネルギー不足で筋トレをした群は、除脂肪量の増加が小さく(−0.57)、筋力の増加は同程度でした。メタ回帰では、1日約500kcalのエネルギー不足で、除脂肪量の「増加」が妨げられる(なくなる)と推定されています。著者らは、この推定にもとづいて、減量中に除脂肪量を維持したい人は、1日500kcalを超えるエネルギー不足を避けるよう、述べています。ただし、これは推定にもとづく提案で、実験で確かめた安全な上限ではありません。この研究が直接示したのは、不足がある場合の、筋トレによる除脂肪量の増え方が小さいことで、筋肉が実際に減る量ではありません[1]。
  • 2022年の総説(Rothら):トレーニング経験のある選手を対象とした15件をレビュー。週のセット数などが計算できたのは、4件だけでした。1部位あたり週10セット以上の高い量の研究では、除脂肪量の減少が少ないかなかった傾向がありましたが、データが不完全で、高い量が除脂肪量の維持に有利と結論できる証拠は不十分としています[2]。
  • 国際スポーツ栄養学会の見解(2017年):エネルギーを制限する期間に、筋トレをしている人が除脂肪量を維持するには、「2.3〜3.1 g/kg/日」の高めの摂取が必要になる可能性がある、とされています(低カロリーの期間の、筋トレ経験者(resistance-trained subjects)についての見解です)。見解の文面では、この数字の分母(体重か、除脂肪量か)は、はっきり書かれていません(冒頭の1.4〜2.0 g/kg/日は、「g protein/kg body weight/day」と定義されています)[3]。
  • 2014年の総説(Helmsら):ナチュラルのボディビルの大会に向けた、減量期の栄養の推奨をまとめた総説です。「ほとんど(すべてではない)の選手は、除脂肪量1kgあたり1日2.3〜3.1gのたんぱく質を摂ると、最も良く反応する」と書かれています。減量の速さは、体重の週0.5〜1%程度とされています。対象は、大会に向けて減量する競技者です[4]。

ちょっと注意(この記事の限界)

  • 研究の多くは、短い期間のものです。長期的な影響は、この記事の範囲外です。
  • たんぱく質の「2.3〜3.1 g/kg/日」は、減量中の筋トレ経験者・競技者についての高めの目安で、初心者が目指す量ではありません。分母(体重か除脂肪量か)が、文献によって異なるため、この数字を体重にそのまま掛けないでください。
  • 約500kcalは、メタ回帰からの推定値で、安全な上限として確かめられた数字ではありません。
  • 研究が調べたのは、主に筋トレによる筋肉の「増え方」です。筋肉が実際に減る量や、減量中の維持を、直接調べたものではありません。
  • 総説(Roth)は、トレーニング経験のある選手が対象で、セット数が分かった研究は4件だけです。初心者に、そのまま当てはまるとは限りません。
  • たんぱく質の上限や、腎臓などへの影響は、この記事では扱っていません。
  • この記事は、論文の要旨(概要)を確認して書いています。本文の隅々までは読んでいません。数字は、要旨に書かれていたものだけを使っています。

参考文献

  1. Murphy C, Koehler K. Energy deficiency impairs resistance training gains in lean mass but not strength: A meta-analysis and meta-regression. Scand J Med Sci Sports. 2022. DOI: 10.1111/sms.14075. PubMed
  2. Roth C, Schoenfeld BJ, Behringer M. Lean mass sparing in resistance-trained athletes during caloric restriction: the role of resistance training volume. Eur J Appl Physiol. 2022. DOI: 10.1007/s00421-022-04896-5. PubMed
  3. Jäger R, et al. International Society of Sports Nutrition Position Stand: protein and exercise. J Int Soc Sports Nutr. 2017. DOI: 10.1186/s12970-017-0177-8. PubMed
  4. Helms ER, Aragon AA, Fitschen PJ. Evidence-based recommendations for natural bodybuilding contest preparation: nutrition and supplementation. J Int Soc Sports Nutr. 2014. DOI: 10.1186/1550-2783-11-20. PubMed